喜多屋スパークリングAWA SAKE 誕生秘話
喜多屋の屋号は「酒を通して喜びを伝えたい」という想いが込められている。
私たち喜多屋が目指してきた「喜びの酒」の最高傑作が、スパークリング日本酒「喜多屋スパークリングAWA SAKE」だ。
蔵が創業200周年を迎えた2020年、喜多屋スパークリングAWA SAKEは、世界に認められる「喜びの酒」となった。
この年に行われた世界最高権威の酒類コンテスト、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)で、日本酒スパークリング部門最高賞のトロフィーを受賞したのだ。
九州の酒蔵が部門トップに輝くのは、IWC2013で日本酒世界一のチャンピオン・サケに輝いた「大吟醸 極醸 喜多屋」以来という快挙だった。
シャンパン評価のトップソムリエであるフィリップ・ジャメス氏から「これからの未来を照らす太陽のような存在だ」と絶賛されるawa酒は、どのようにして誕生したのか?
次はどんな日本酒で
IWCに挑戦しようか?
「再び世界の舞台でトップに立ちたい」
「大吟醸 極醸 喜多屋」が、IWC2013の世界王者に輝いたあと、すぐに喜多屋の蔵人たちは、新しい酒の開発に取り組み始めた。
どんな酒で再び世界チャンピオンを狙おうか?
そのヒントが屋号にあった。
「うちのお酒は屋号にもあるように、喜びのシーンに欠かせないもの。
その極めつけのシーンは乾杯じゃないですか。
お祝い事での乾杯を彩る最高ランクの酒として、世界の誰もが認めるのがシャンパーニュ。
その乾杯酒の横綱に迫るものを造りたいという思いがありました」
7代目の蔵元、木下宏太郎はそう振り返る。
「乾杯の時に、awa酒は気分を高揚させます。
スパンと封を開ける音、グラスに注いだ時に一筋の泡が立ち上る見た目、口の中に広がる香り、炭酸特有ののどごし。
私は乾杯酒には、泡ありのお酒が1番ふさわしいと思うんです」
スパークリング酒の製法には、瓶の中での自然発酵で泡をつくるナチュラルな方式と、瓶内に人工的に炭酸ガスを注入するカーボネーション方式がある。
喜多屋では2000年からスパークリング日本酒の開発を始めている。
そして翌年に発売を開始したのが「あいのひめ」だ。
シャンパンと同じ瓶内二次発酵でつくったナチュラルスパークリング。
ただ酵母を除去していないから、いわゆる「にごり酒」である。
低アルコール・甘めの味わいで、食前酒として若い女性などに人気だ。
「シャンパンと同じアルコール12%本格的な日本酒好きも好む芳醇タイプで、料理にも合わせられるような透明感のあるスパークリングをつくりたかった」と木下。
シャンパンのように世界に評価されるawa酒を目指して、喜多屋スパークリングAWA SAKEの開発がスタートした。
ベースは山廃仕込の日本酒
新たなスパークリング日本酒を開発するにあたって、あらゆる喜多屋の銘柄に炭酸を注入して試飲した。
そこでわかったのは、精米歩合が高くなればなるほど、味が物足りないこと。
「ボディが感じられず、つまらない味になってしまった」と7代目は言う。
大吟醸のスパークリングでは、蔵のテーマである「福岡の食を引き立てる『芳醇爽快』な酒」にならない。
何が足りないのか?
シャンパンと比較して考えたとき、答えはすぐに出た。
「酸」と「旨味」だった。
そして喜多屋で唯一、酸と旨味が特徴の日本酒と言えば、山廃仕込だった。
複雑でありつつも、きれいに澄み切った山廃の酸が、スパークリングと重なり合った時、試飲した蔵人ら全員が「うまい」とうなった。
蔵が目指す芳醇で、透明感を秘めた酒の土台が完成した。
自然の乳酸菌で清酒をつくる山廃仕込みは、一般的な手法で製造される日本酒に比べて数倍の時間がかかる。
さらに、自然の泡を作り出すために、瓶内に入れた日本酒を2ヶ月から3ヶ月かけて二次発酵させる時を要する。
「おかげで、喜多屋スパークリングAWA SAKEは私たちの蔵の中で、とんでもなく手間と時間がかかる日本酒になりました」と木下は笑う。
本家シャンパンを超える
ナチュラルなスパークリングが完成
喜多屋スパークリングクリスタルをつくるにあたって、製法を手本にしたのはシャンパン。
泡をつくるための二次発酵後は瓶内に残る酵母の澱(おり)を、きれいに取り除くことが極めて重要だ。
そのために「ルミアージュ」(澱を瓶口に集める)、「デゴルジュマン」(瓶口に集まった澱を取り除く)と言われる作業が必要になってくる。
喜多屋ではルミアージュのための機械をフランスから取り寄せた。
そして7代目自らシャンパーニュ地方に足を運び、本場のデゴルジュマンを学んだ。
「できるだけガスの抜けを抑えて、澱だけを飛ばす作業を手作業で行う小さなシャンパンメゾンでして。
酵母だけが飛んで、ガスが抜けない。
だから、中身も吹きこぼれない。
コンマ何秒かの世界で、まさに神業!」
帰国後、この手作業のデゴルジュマンの極意を学び、喜多屋でも取り入れた。
「運動神経のいい若手蔵人に任せました」と木下。
神業まではいかないが、酵母だけを飛ばし、ガス抜けを抑えた透明感のあるスパークリングをつくる技術が身についた。
このデゴルジュマンの技術によって品質が激変し、世界で競う準備が整った。
日本酒のスパークリングは
「太陽だ」と著名ソムリエ
シャンパンに詳しい方ならご存知だろうが、ナチュラルなスパークリングワインは瓶内二次発酵の際に糖を添加してガスをつくっている。
しかも、最終的な甘みの調整にリキュールを添加してもいい。
喜多屋が所属しているawa酒協会では、特別なスパークリング日本酒「awa酒」を、世界の乾杯シーンでシャンパンやスパークリングワインと肩を並べる存在にするため、厳格な基準を定めている。
糖などの添加は許されず、純粋な日本酒でなければならない。
つまり、もろみ由来の糖分で発酵を促し、自然の泡をつくっていく。
「awa酒はをシャンパンの専門家たちも、絶賛してくれているんです。
とにかくナチュラルだ、と。
特に喜多屋スパークリングAWA SAKEには、どこにも添加物がないんです。
原料は地元福岡県糸島産の山田錦で、山廃仕込でつくっていますから一般的な日本酒と違って乳酸も添加もしてないわけですよ。
そんな点もすばらしいawa酒だと思いませんか」
喜多屋7代目はそう言って、胸を張る。
「シャンパンじゃない。
日本酒と同じものでもない。
これからの未来を照らす太陽だ」
そうフランストップレベルのソムリエも絶賛した、新ジャンルとも言えるawa酒。
喜多屋スパークリングAWA SAKEは、世界中の人に愛されるawa酒を目指し、これからも進化を続けていく。